平成9年度 研究報告 大分県産業科学技術センター
七島いの有効利用に関する研究
中原 意・大内 成司
材料開発部
St udy on U
t i l i z at i on of Shi chi t oui
Megumi NAKAHARA。J ohj i OUCH工
Mat er i al Devel opment Di vi s i on
要旨
産業廃棄物や資源枯渇の問題が深刻化している中,県内各地でも,木廃材やスギ樹皮,ミカンジュース残渾などいろ いろな農林産加工廃棄物が発生している.これらの植物性廃棄物は繊維質のもので,その繊維を包装資材や農業資材, 建築資材等のシート材料に利用することi こよって廃棄物の有効利用,再資源化が可能であると考えられる.
中でも,本県特産の七島いは主に畳表材料として栽培されているが,畳表製造工程で大量の七島いが廃棄されている 点に着目し,その有効利用と七島いの新たな資源としての将来性について調査,検討を行った.
1緒 言
七島いは,かつては国内各地で栽培され,畳表として 流通していたが,今日では本県の杵築,国東地方が国内 で唯一の生産地になっている.
七島いの畳表はイグサよりも強くて摩耗しにくいと言
われ,柔道畳として重宝されており,関東や中部地方で も需要が大きい.
しかし,生産が機械化が確立されていないために重労 働を強いられ,イグサや海外製品との競合,さらには近 年の生活様式の変化に伴う畳離れも手伝って,後継者不 足や需要の低迷が続いている.
今後,機械化による労働の軽減化や自動化による生産 効率の向上,新製品開発による需要開拓が大きな課題で あるが,ニこでは当面の言果題として,生産工程において
発生する七島い葵棄物の有効利用について検討すること
とした.
2 調査および実験
2.7 調査方法
本県には,七島い生産を振興するために農業技術セン ター茶業特産部の杵築試験地が設置され,七島い振興に あたっており,今回の調査,情事糾文集に協力いただいた. 調査内容は七島いの植物学的特性や栽培技術,畳表生産
技紙 生産量や生産戸数,作付け面積等のデータ,生産
における課題等で,競合作物との比較により今後の資源 としての将来性も検討した.
2.2 七島い廃棄物の処理実験
七島い顧乗物を長さ5cmに切断し,ディスクレファ イナー(熊谷理器工業(株)製)で暦砕して物理的に得 た繊維と,カセイソーダ0.5%水溶液で30分間煮沸し
て化学的に得た繊維を用いてそれぞれシートマシン(安 田精機製作所 t ′ 株)製)で抄紙実験を行った。
3 結果及び考察
3.1七島いの植物学的特性
七島いは,東南アジアを原産地とするカヤツリグサ科 の多年草で.琉球いとも呼ばれている.学名C叩er し1S moI l OPh)・11us ㌧量Ⅲ一.地上茎は三角形の断面を持ち,3カ
月程度で2mにまで生長するが,畳表としては105∼
120cm以上こ伸びたものを二分劃して乾燥させて加
工原料とする.繁殖は種子からでも可能であるが,−・般 には地下茎を掘り上げて苗として調整し,株分けする, 水田でも畑地でも栽培が可能であるが,生産性や品質の
煮で水田栽培が優れている.
Tabl el は、七島いを他の植物資源と比較したもので ある.畳表原料で競合するイグサ(学名J uncus f or ma nt l l l s ト!akl no)と比較すると,収量は同等だが生産期間 が短い.また,七島いが紙(書写材料)の起源とされて いるパピルス(Papyr us :学名Cyper us Papyr us L)と種
を同じにすることから,木材資源の枯渇問題で製紙原料
の代替資源として注目されているケナフ(Kenaf :学名 Hi bi s cus Cannabi nus )とも比較したが,やはり生産期間 が短い点は特筆に値する。また,年3回の栽培(三番毛 栽培)も可能で,畳表材料としての長尺材の収量増加は
困難としても,製紙原料としての収量増加が期待できる. 3.2 七島い栽培と畳表生産
現在,七島いは杵築市と国東4町村で12ha約130 t on(県農産課調べ)生産されている.生産は,5∼6月 に植え付けて8∼9月に収穫するが,株分けや収穫,乾 燥に多くの労働時間を要する。生産戸数,作付面積,生 産量のいずれをとっても減少傾向にある.又,畳表の需 要も伸び悩み,畳表生産のための七島い栽培の振興も難
しいのが現状であるといえる.
生産の省力化や収率の向上とともに,新たな需要開拓 や廃棄物の資源化による収入等の増加によって,生産者
にとって魅力ある産業にする必要がある. 3、3 廃棄物の発生状況
七島い栽培では,べっ甲病や地上茎の倒伏,茎折れが
発生しやすく、刈り入れ時に畳表原料に適さない低品質 材や短尺材は選別され,廃棄される。その廃棄量は、3 ∼4割にも及ぶが,腐敗しにくいため焼却されている. これは,年間40† on以上にもなると推計され,その有効
利用は七島い産業の振興に不可欠である. 3.4 製紙原料としての適性
七島いの製紙原料としての可能性について,県い業指 導所(現杵築試験地)が昭和62年に製紙企業に依頼し てその可能性を確認し、壁紙や出版用紙等にターゲット
を絞ることが好ましいという評価も受けている. 今回,磨砕によって物理的に得た繊維と薬品処理に よって化学的に得た繊維を用意し,それぞれ紙の製造実
平成9年度 研究報告 大分県産業科学抜捕センタ脚 験を試みた.
物理的に繊維を得る方法楓 廃液処理等の環境負荷が
小さい処理法と考えられるが,繊維の切断やちぎれのあ る政経束程度のものであるため.平滑性や緻密性に欠け る一方,原料となる植物の個性が出る紙を製造できると いう特徴があった.一方き 化学的に得た繊維は,繊維問 を結合している化学成分を溶かし出して繊維を取り出し
ているため、通常の平滑で緻密な紙原料として広く使用
されている,七島いから化学的に得た繊維で試作した紙 についても同様で平滑であるが,色以外に他の原料と見 分けがつきにくい紙になることがわかった.七暴いを製 紙原料として利鞘するためには化学的処理方法が必要で あるが,大量生産の製紙原料としては付加価値が低くな り,生産者のメリットが少ないことが予想される.むし ろ,産地やその域内で消費する地域特性を生かした製品 開発の方がメリットが大きく,そのた捌こは物理的処理
法を応用していく方がよいと考えられる。
3.5 有用資源としての将来性
近年,木材資源の枯渇が大きな問題になっており,ケ
ナフやサトウキビの絞りかすであるバガスが製紙原料と
して注目され,研究されている.これはサ 生産性と製紙 特性に着目したものであるが.七島いについても同様の 検討を行った.バガスは国内では沖縄.海外でも南米等 で大量に発生する廃棄物で,その有効利用は注目に値す
るが、七島いについては先にも比較検討したようにケナ
フと同等以上の生産性をもっている.産地の現状では大 量の原料確保は困難な状況であるが.資源としての将来
性は大きい
4 緒 言
七島いは,畳表生産時に畳表原料に適さない七島いが 大量に廃棄される.そこで,七島いがパピルスと種を同 じにするため,紙への利用について検討し,その有用性 を確認した。今後,農業技術センター茶業特産部杵築試
験地と連携を取りながら,用途開発やそれに必要な機能 化について研究を行う。
これまでの廃棄物虚未利用資源調査により,県内には 七島いや竹材,スギ樹皮をはじめ多くの有用な資源が
眠っている.中でも、七島いは 畳表の需要低迷の中に あって、生産性の上から製紙原料としての有用性が大き い.現時点では,畳表原料として不適な病害虫被害材や 短尺材などの廃棄される七暴いの有効利用が最優先され
るが,将来的には資源としての七島いについてもさらに 検討が必要であると考える.
最後に,資料や材料の収集等でご協力いただいた農業 技術センター茶業特産部杵築試験地の小野和也研究員に
謝意を表す.
Tabl e.1 植物資源の比較
☆非木材紙三稽,三柾などの和紙が代表例。最近は、原料としてコットン,ケナフ,
バガス,タケ,海藻などが注目されている